Yamasaki 2006年11月・12月の我が家の出来事−1



新しい温泉津

masuya

徹の父の四十九日の法要を松江で行い、翌日温泉津にある墓に納骨した。その夜は、旅館「ますや」に徹の母も含めて5人で泊まった。部屋は古いが趣があり、もてなしは温かい。そして料理は地元でとれる旬の食材を使ったすばらしいものであった。徹の母も温泉津で旅館を3代やってきた家の娘であるが「とてもおいしい」と満足していた。そして「ますや」の女将さんも徹の母のことを知っていて、昔話に花がさいていた。写真はその女将さんにとってもらったものである。
徹は、温泉津が温泉街として日本で初めて「町並み保存」に指定されていることを、この「ますや」のホームページで初めて知った。来年は温泉津が石見銀山とともに銀の積出港として世界遺産として登録される可能性が高いと聞いていたが、「町並み保存」指定はその第一歩であったと理解した。そして、実は世界遺産登録の可否を決めるための外国からの視察団が、丁度この日温泉津を訪れていたのである。彼らは「ますや」近くの「のがわや」旅館に泊まり、朝出発するときに上の写真を撮っている徹たちと出会った。そういえば夕食を部屋で食べているときに、「のがわや」旅館の方角から「石見神楽(いわみかぐら)」の音楽が聞こえていたが、あれは町が彼らを接待していたのだろうと合点した次第である。


roan roan2

たまたま温泉津へいく前日に、あるテレビ番組で温泉津の紹介をしていた。徹はそこで紹介されていたほぼすべての場所を知っていたのだが、ただひとつ新しくできたという「路庵」(素敵なホームページ)という店は知らなかった。そして温泉津に来てみたらなんと「ますや」のとなりにその「路庵」があった(そのまたとなりが「のがわや」旅館である)。これは是非行って見なければ、ということで夜夕食をとったあとに家族で押しかけてみた。「路庵」は築100年の町屋を「伝統と現代の融合」というテーマで改修、1階は居酒屋(左写真)2階はギャラリー(右写真)になっている。左写真で徹と毅が飲んでいるのは、これもまたテレビ番組で紹介をしていた、現在では温泉津の唯一の酒蔵若林酒造(ブランド名「開春」)の「開春竜馬」という生原酒である。これは、「山口竜馬」という若い蔵人が自分の名前をつけて造っているお酒とのこと。とてもおいしかったので、松江への帰りに直接「若林酒造」に寄って求めようとしたが残念ながら生原酒は売り切れとのこと、仕方なく生ではない「開春竜馬」を買って帰った。だがこれもおいしかった。「かんなび」を作っている松江の友人が言うには、現在島根県で元気なのは松江の「豊の秋」と温泉津の「開春」、とのこと。納得である。

「若林酒造」の「山口竜馬」という人はもともと広島県出身の人で、埼玉県で修行したあと近くの(ちょっと遠いかも知れないが)温泉津に戻ってきた。また、今回「ますや」以外に宿泊の候補にあげた宿のひとつに「吉田屋」があるが、そこの若女将は「山根多恵」という、これも近くの山口県出身の人である。ベンチャービジネスの勉強をしたあと、後継者がいなかった「吉田屋」にきたそうである。そして実は「路庵」で働いていた若い女性と話をしたが、彼女も温泉津の近くの出身だった。つまり、若い人にJターン(?)を決断させる理由が温泉津にあると考えられる。それが温泉津の世界遺産登録に便乗したいという若干受動的な理由なのか、それとも「吉田屋」の若女将が「過疎や高齢化、伝統ある仕事の後継者不足など、日本が抱えるあらゆる課題があってそれだけ大変だけど、問題を解決したら全国のモデルになることは魅力」と言っているようにきわめて能動的な理由であるかはわからないが、温泉津温泉から「撤退」した「いなや」5代目としては応援したい。


roan3 roan4 roan5

「路庵」2階のギャラリーで、「温泉津プロジェクト」が紹介されていた(ポスター:左写真)。このプロジェクトは、京都造形芸術大学と温泉津町が協力し、地域が伝承している歴史文化や特性を生かすことによる「新しい町おこし事業」の可能性を、芸術文化面から追求していくプロジェクト、だそうである。具体的には、「こども神楽ワークショップ」(ポスター:中写真)と称して近隣小学校と学生が神楽を共同で勉強し練習して温泉津温泉夏祭りで披露したり、「海神楽」と称して砂浜で「石見神楽(いわみかぐら)」と学生たちが創作した舞台「寿唄(ほぎうた)」(ポスター:右写真)を一緒に演じたりしているとのこと。「路庵」ではその「海神楽」のDVDを売っていたので、「応援する」という気持ちで求めてみた(後日見てみると、「石見神楽」は、松江のほうに伝わる「出雲神楽」より衣装も演技も派手で、特に「大蛇(おろち)」という題目はなかなかに迫力あることがわかった)。子供時代の夏休みや正月の時期を祖父母のいた温泉津で過ごした徹から見ると、学生時代をすごした京都の学生が温泉津を立て直そうとしてくれている、という構図がとても嬉しかった。

なお、「日経トレンディ12月号」に掲載されている「07年ヒット予測ランキング」の20位に「温泉津温泉」がはいっていることが、「吉田屋」の若女将のブログに紹介されている。また、最近「日経トレンディ」のホームページでも紹介された。



次ページ


2006年の出来事

ホーム