Toru クラシック音楽 - 室内楽曲 -



室内楽とは、なかなか渋いものであり、若いころはとっつきにくいものだった。しかし年をとるにしたがってその良さがわかってきた。特にベートーヴェンの後期四重奏曲の良さがわかるようになってきたのはありがたい。まだそれほど聞きこんでいるわけでもないが、アメリカにきてから好みになった曲もたくさんでてきた。なお、ソロの器楽曲は別に取り扱うことにしたのだが、それでも伴奏つき器楽曲から8重奏曲までたくさんの種類の曲があり、紹介する曲は多くなってしまった。

ヴィヴァルディに「忠実なる羊飼い」というフルートソナタがあるが、他のヴィヴァルディの曲と同様にほとんど聞かない。演奏はランパルとヴェイロン=ラクロワ。

バッハの「音楽の捧げもの」は、たまにしか聞かないものの、滋味のあるいい曲だと思う。LP時代はレーデル指揮によるミュンヘンプロアルテ室内管による演奏で聞いたが、現在はリヒターのチェンバロ・指揮による演奏。それよりバッハでは「ヴァイオリンソナタ」(クイケンとレオンハルトの演奏)、「フルートソナタ」(ラリューとプヤーナ)が好きな曲である。「ヴィオラダガンバ(チェロ)ソナタ」もいい曲であると思うが、あまり聞かない。

大好きなヘンデルにも室内樂がある。「ソナタ集作品1」は、さまざまな楽器を使った室内楽で楽しめる。有名なのは4番だが、皆劣らずいい曲だと思う。ヘンデルの「合奏協奏曲」からは元気をもらえるが、この「ソナタ集作品1」からは安らぎをもらえる。今このホームページを書いているときもBGMとして聞いているが心が落ち着く。演奏は木管のソナタはブリュッヘンなどの古楽器奏者達のもの、ヴァイオリンのソナタはグリュミオーとヴェイロン=ラクロワのもの。

さて、室内楽といえば四重奏曲、そして四重奏曲の父といえば、ハイドンである。ハイドンは交響曲の父でもあるが、四重奏曲の方が好みである。さてそのどれがいいかであるが、名前のついている「皇帝」「ひばり」「セレナード」(偽作といわれているが)「五度」「日の出」「騎士」などどれも素晴らしい。きっとその他の曲もいい曲だろうと想像できるのだが、残念ながらまだ聞いたことがない。その中でも「皇帝」は有名な第2楽章だけではなく第3楽章も大好きである。また「ひばり」はもう本当に愛らしい曲だ。この第一楽章を聞いて幸福な気分になれない人は不幸である。演奏はアルバン・ベルク四重奏団がいいと思うが、「ひばり」などはイタリア四重奏団がもう曲想とぴったりである。
ハイドンでは「十字架上の七つの言葉」も忘れるわけにはいかない。この曲はオーケストラ版、オラトリオ版もあるとのことだが、この四重奏曲版でじゅうぶんその良さが認識できる。ゲヴァントハウス弦楽四重奏団の演奏。

モーツァルトでは、まず初期の作品集「フルートソナタ(6曲)」は特に5番などとても愛らしい曲で大好きである。ピアノの伴奏をフルートが行っているという普通とは逆の関係になっているのも面白い。ケメネスというピアニストとギョンギョシーというフルーティストの演奏だが、多分どんな人の演奏でもいいのではないか。43曲もある「バイオリンソナタ」は全部聞いたことはないが、シェリングとヘブラーの演奏で16曲、グリュミオーとハスキルの演奏で6曲持っている。そのうち唯一の短調の曲である28番は、特に第2楽章が哀愁をたたえたメロディーで忘れがたい。あとは似たような曲が多いがいずれも素敵なメロディーに溢れている。その中で34番は特にその第1楽章の主題が好きだ。それから後期の曲40番、41番、42番になるとどんどん味わい深くなっていく。そして最後の曲第43番は「初心者のために」という副題がついているが、簡潔な曲でなおかつ美しい。特に第1楽章の主題は素敵だ。
三重奏曲では「ディベルティメントK.563」を昔からよく聞いた。演奏は今はラルキブデッリでしか持っていないが、LP時代はグリュミオー・トリオで聞いていた。それから最近クレーメル・カシュカシアン・アファナシエフの「ケーゲルシュタットトリオ」を聞いて、この曲が素敵な曲であることがわかった。ザビーネマイヤー・ツィマーマン・ヘルの演奏を聞いていたときはそれほどとは思わなかったのに、、、。クラリネットとヴァイオリンの違いもあるが、どうやらピアノの弾き方の違いらしい。
さて彼が四重奏曲の父ハイドンにささげた、弦楽四重奏曲集「ハイドン・セット(6曲)」の中では名前のついている17番と19番が有名であるが、14番とか短調の15番が特に好きである。しかしその後に作曲された「プロシア四重奏曲(3曲)」はもっと内面的に深い音楽になっており、これらの曲の方が最近は好みになってきた。特に緩徐楽章は素晴らしい。以上すべてアルバン・ベルク四重奏団の演奏で聞く。それも旧録音の方がテンポがゆったりとしていて好みである。四重奏曲では「オーボエ四重奏曲」も同様に緩徐楽章が素晴らしい。キス・コダーイ四重奏団の演奏(ナクソス盤:ベートーヴェンの四重奏曲の項参照)。あと「フルート四重奏曲(4曲)」とかも軽い曲ながら昔から楽しんできた。ランパル・スターン・シュナイダー・ローズの演奏。もうひとつ、「ピアノ四重奏曲1番」もいい曲である。バーンスタインとジュリアード四重奏団員の演奏。「ピアノ四重奏曲2番」もいい曲かも知れないが、今持っているCD(ルービンシュタインとグアネリ四重奏団員の演奏)は、ピアノが強すぎて、第2楽章以外は今ひとつ楽しめない。
モーツァルトの室内楽の中には「クラリネット五重奏曲」という大変素晴らしい曲がある。もしかするとすべてのモーツァルト作品の中でも「アヴェ・ヴェルム・コルプス」と並んでもっとも好きな曲かも知れない。演奏は、有名なウラッハ・ウイーンコンツェルトハウス四重奏団も持っているが、今のところプリンツ・ウイーン室内合奏団がいちばんしっくりくる。その日本版ライナーノーツに石井宏さんが以下のようにこの曲を表現している。まったくこの通りだと思う。「この五重奏曲は優美にして、典雅、気品、光、影、愁い、優しさ、愛、などのすべての諸相を備えた、まさに天上の作品であり、・・・」。五重奏曲では、「弦楽五重奏曲」3番、4番は昔から好きだった(他の曲は聴いたことがない)。3番は長調ではあるがときに愁いとか翳りを感じさせるのがやはりモーツァルト、そして4番はもう「短調のモーツァルト」である。演奏は今はアルバン・ベルク四重奏団(+ヴォルフ)の演奏で聞くが、LP時代はブダペスト四重奏団(+トランプラー)でよく聞いた。それから「ホルン五重奏曲」も特にその第2楽章の素晴らしさではずせない。ケヴェハジ・コダーイ四重奏団の演奏。ところでここまできて、ようやくモーツルトに関していえば、交響曲や協奏曲より室内楽や宗教曲の方が好きなことがわかってきた。乱暴ではあるが、やはり交響曲や協奏曲はベートーヴェンのほうが好きだ。最後にとっておきの変な曲「音楽の冗談」もモーツァルトの一面が見えて愉しい。そしてこんな曲の中にもそこはかとなき哀愁をも感じさせるのがモーツァルトだ。ケヴェハジとコダーイ四重奏団の演奏。

さてベートーヴェンであるが、まずは10曲ある「ヴァイオリンソナタ」はどれも素晴らしい。初期の3曲はいずれも愉悦感あふれる。第4番もすてきだし、有名な第5番「スプリング」はもちろん特に第1楽章は大好きである。第6番、7番、8番はもうベートーヴェンの激しい世界だ。これも有名な9番「クロイツェル」は、第1楽章のバッハの無伴奏バイオリンソナタを思わせる厳しい音からはいって一気に聞かせる。凄い迫力だ。そして第10番は嵐がおさまったような優しさにあふれている。この「ヴァイオリンソナタ」をまとめてとても素晴らしい演奏できける。クレーメルとアルゲリッチである。もしかしたら彼らの演奏でなければ、全曲推薦できないかもしれない。「チェロソナタ」では第3番が素敵な曲だ。特に第1楽章は素晴らしい。ロストロポーヴィッチとリヒテルの演奏である。
さて16曲ある「弦楽四重奏曲」だ。そのうち、初期の6曲は随所に、特に緩徐楽章にすてきな音楽が聴かれるものの、いずれもまだベートーヴェンらしさがでていないし、モーツァルトにかなわないと思う。ただしその中で第6番だけは、まとまりよく聞ける。演奏はコダーイ四重奏団。実はベートーヴェンのその他の四重奏曲はアルバン・ベルク四重奏団で持っているのだが、第5番・第6番だけは品切れでとうとう買う機会を逸し、仕方なく廉価盤であるナクソスのこの四重奏団のCDを買ったのだが、これが正解だった。ナクソス盤を見なおすきっかけになった。さて中期の「ラズモフスキー四重奏曲」になるともうベートーヴェンであり、その激しさは交響曲のようだ。そのなかでは2番がまとまりよく聞ける。不思議なことに第3楽章などはもう近代のメロディーだ。第3番も特にその最終楽章の盛り上がりの素晴らしさに感激する。さて「ハープ」「セリオーソ」は遠慮することにして、「後期四重奏曲(6曲)」になるとどの曲も、やはり緩徐楽章が素晴らしい。その中でも、いずれの楽章も深い意味を感じさせる「14番」、有名な第3楽章を中心に抒情性がちりばめられた「15番」が素晴らしい。やはり、中期の交響曲のような曲ではなく、これらのような曲想の曲のほうが、小規模な編成の室内楽には向いているような気がする。
「弦楽三重奏曲」はその「弦楽四重奏曲」作曲のための習作だったようだが、そのなかで「弦楽三重奏曲」作品3はモーツァルトのディベルティメントのような愉しい曲である。ムター・ギウランナ・ロストロポーヴィチの演奏。それからベートーヴェンの作品1が含まれている11曲の「ピアノ三重奏曲」も名作が多いと思う。すべて聞いたわけではないのだが、その作品1にしたところでなかなかいい曲だ。特に第2楽章はとてもロマンチックである。ウイーン・ピアノ・トリオの演奏。それから「街の歌」「幽霊」「大公」と名前の付いている曲はいずれもいいと思う。演奏は今のところ「街の歌」はウイーン・ピアノ・トリオ、「幽霊」はボザール・トリオ、「大公」は古いモノラル録音だがカザルス・トリオ。「大公」はボザール・トリオの演奏もあるがピアノがでしゃばりすぎだと思う。
もうひとつ「七重奏曲」は昔から親しんできた。第2楽章のクラリネットの旋律などモーツァルトのクラリネット五重奏曲を思い起こさせるが、とにかく愉しいメロディーが満載されている。ウイーン八重奏団またはベルリン八重奏団の演奏。前者のほうがふくよかな音色だが、全体として少し腰が弱いような気もする。

シューベルトは旋律家だけあって室内楽とくに小規模なものがいい。まずは「アルペジオーネソナタ」だ。素敵なメロディーにあふれた曲である。ロストロポーヴィチとブリテンの演奏。同様に3曲ある「ヴァイオリンソナタ」はいずれもいい曲だと思うが、特に2番が大変気に入っている。それと「ヴァイオリンとピアノのための二重奏曲”グランデュオ”」と呼ばれる烈しさも備えた曲も素晴らしいし、「ヴァイオリンとピアノのための幻想曲」は哀愁を漂わせた美しいメロディーがはいっている。以上スターンのヴァイオリンとバレンボイムのピアノで聞く。
「ピアノ三重奏曲第一番」は、曲自体は有名な「ピアノ五重奏曲”ます”」よりも好みである。但し持っているオイストラッフ、クヌシェヴィツキー、オボーリンの1947年録音のCDは、演奏はいいのだが音があまりよくない。「弦楽四重奏曲」は全部聞いたことはないのだが、親しみやすい抒情で満ち溢れた13番「ロザムンデ」と有名な第2樂章だけではなくその他の楽章も激しい情念を感じさせる「死と乙女」はいい曲だと思う。15番もいい曲かも知れないが、長大な室内楽なら「弦楽五重奏曲」の方が好みだ。昔この曲を聞いて、シューベルトの激しさをはじめて知った。でもシューベルトのロマンもたっぷりはいっている。いずれもやはり、アルバン・ベルク四重奏団の演奏(五重奏曲はそれににシフが加わった演奏)。五重奏曲では、先に述べた「ピアノ五重奏曲”ます”」がやはり第4樂章が忘れがたい曲だ。リヒテル、ヘルトナーゲルとボロディン四重奏団員の演奏。それから「八重奏曲」もベートーヴェンの「七重奏曲」と同程度に愉しい曲である。ベルリンソリステンの演奏。

シューマンでは、「ピアノ四重奏曲」が特にその第3楽章の哀愁に満ちたメロディで忘れることができない。もう一曲、「ピアノ五重奏曲」が華やかで明快なメロディで楽しませてくれる。いずれもボザールトリオ(+ローズ+ベッテルハイム)の演奏。一方3曲ある「弦楽四重奏曲」は、1番と3番しか聞いたことがないのだが、いずれの曲も第4楽章以外はちょっと沈うつで楽しめない。やはりシューマンはピアノがはいっているほうがいい。

ロッシーニの「弦楽のためのソナタ集」はいずれの曲も明るく愉しくて大好きである。まったく12歳で作曲したということだから驚きである。最初イタリア合奏団の演奏を聞いていたが、アッカルドを中心とした四重奏のCDを聞いてからとしてはそちらを主に聞くようになった。どちらでもいいと思う。

メンデルスゾーンの「ピアノ三重奏曲第一番」は親しみやすくロマンティックなメロディーがはいった素敵な曲である。ルビンシュタイン・ハイフェッツ・ピアティゴルスキー及びボザールトリオの演奏で持っているが、どちらでもいいし、きっとどんな演奏でも楽しめると思う。それから「八重奏曲」がまた明るく愉しい。ウイーン八重奏団の演奏。メンデルスゾーンの室内楽はあまり聞かれないようだが、作品1の「ピアノ四重奏曲」第1番(ロンドンシューベルトアンサンブルの演奏)でさえ愉しい曲であり、もっとたくさんの曲がCD化されてしかるべきだと思う。

ショパンの室内楽としては「チェロ・ソナタ」があるが第3楽章以外はあまりピンとこない。やはりショパンはピアノが全面に出ている曲でないと、、、。デュプレ・バレンボイムの演奏。

フランクの「ヴァイオリンソナタ」はフランスの香りがする素敵な曲である。特に第3楽章はいい。チョンとルプーの演奏とパールマン・アシュケナージの演奏を持っているが、この曲に関してはチョンの没入度合いが低く、後者の方が好み。またチェロ編曲版でデュプレとバレンボイムの演奏、フルート編曲版でゴールウエイとアルゲリッチの演奏もあるが、やはりヴァイオリンが一番ぴったりくる。次はフルートか。もう1曲「ピアノ五重奏曲」は第1楽章はすぐいいとわかったのだが、第2楽章のよさがなかなかわからなかった。渋い上に盛りあがりに欠けていたからなのだが、3、4回聞いてようやく深みのある素晴らしい曲だということがわかった。カーゾンとウイーンフィル四重奏団の演奏。しかし、残念ながら「弦楽四重奏曲」は渋すぎてその良さがわからない。ジュリアード四重奏団の演奏。

フランク、プロコフィエフのフルートソナタと同一のCDにはいっていたので知っているのだが、ライネッケという作曲家の「フルートソナタ」も佳曲だと思う。ゴールウエイとモルの演奏。

スメタナの「弦楽四重奏曲」1番"わが生涯より”は特に第1楽章など烈しい曲で、いいたいことはあるのだろうが楽しめない。2番のほうが、同傾向であるものの、ところどころにおもしろいメロディーが出てくる。しかしやはりあまり聞かない。

ブラームスである。まず2曲ある「クラリネットソナタ」は遠慮して、ブラームスの渋さにぴったりしていると思われるのが、これも2曲ある「チェロソナタ」である。第1番は第1楽章の渋さ、第2楽章の明るさ、第3楽章の烈しさと多彩な楽想で聞ける。そして第2番は、第2楽章などもっと深い味わいのある音楽になっていると思う。ピアティゴルスキー・ルビンシュタインの演奏。そして3曲ある「ヴァイオリンソナタ」はその同じ路線上にあるが、親しみ易さも持った素晴らしい音楽である。第1番は抒情と感傷、第2番は明るさと情熱、第3番は厳しさというように、おのおのの曲に特徴を感じさせる。パールマン・アシュケナージの演奏。
3曲ある「ピアノ三重奏曲」のうちでは、最初は渋くて暗くてなじめなかったが、第2番と第3番がいずれも人生の秋をしみじみ感じさせて素敵な曲だと思えるようになった。「クラリネット三重奏曲」は今ひとつ楽しめない。いずれもボザールトリオの演奏である。もうひとつ「ホルン三重奏曲」もあまり楽しめない。アシュケナージ・パールマン・タックウエルの演奏とセボック・グリュミオー・オーヴァルの演奏がある。
「弦楽四重奏曲」は目立たないが3曲とも素敵である。アルバン・ベルク四重奏団の演奏が素晴らしいからかも知れない。本当にこの四重奏団は、TELDECに録音した8枚ぐみの録音で、ハイドンからウエーベルンまで本当に素敵な演奏を残してくれたと思う(これをTower Recordで30ドル程度で買った)。しかし残念ながら実際の演奏を何年か前サントリーホールで聞いたことがあるが、あまり感激しなかった。録音も新しいものより古い方がいいと思う。さてブラームスに戻って、これも3曲ある「ピアノ四重奏曲」のうち第1番は、両端楽章は愉しいが第2楽章と第3楽章はいまひとつだ。ルビンシュタイン・ガルネリ四重奏団の演奏。第2番はいい。特に第2楽章はロマンチックのきわみだ。ロンドンシューベルトアンサンブルの演奏。第3番も聴ける。特に第3楽章には深い味わいがある。ルビンシュタイン・ガルネリ四重奏団の演奏。
五重奏曲では、晩年の「クラリネット五重奏曲」はいい曲だと思う。プリンツとウイーン室内合奏団の演奏。2曲ある「弦楽五重奏曲」のうちでは第2番が「クラリネット五重奏曲」と同様に滋味があっていい曲だと思う。ルートヴィッヒ四重奏団の演奏。一方「ピアノ五重奏曲」は聞かない。ゼルキンとブタペスト四重奏団の演奏があわないのかも知れない。
「弦楽六重奏曲」第1番は第2楽章が映画に使われたほど大変有名でたしかにいいと思うのだが、その他の楽章が今ひとつ楽しめない。それになんだか和音ががさつな感じがする。全体の出来としては第2番のほうが上のような気がするのだが、この曲もあまり聴かない。いずれもベルリンフィルハーモニー八重奏団の演奏。

チャイコフスキーの「弦楽四重奏曲第1番」は第2楽章が大変有名でたしかにいいと思うのだが、その他の楽章が今ひとつ楽しめない。エマーソン弦楽四重奏団の演奏。また「ピアノ三重奏曲」も第1楽章のみが聞ける。ルビンシュタイン・ハイフェッツ・ピアティゴルスキーの演奏。

ドヴォルザークの室内楽はアメリカにきてからどんどん好きになってきた。なんといっても郷愁を感じさせるのがいい。まず「ロマンティック・ピーセズ」という曲はその名のとおりロマンティックな小品群で、特に第4曲は素晴らしい。それから「ソナチネ」も親しみやすいメロディーがちりばめられている。日本の民謡みたいなメロディーもでてくるのでおもしろい。両方ともシャハム兄妹の演奏。
4曲ある「ピアノ三重奏曲」は残念ながら3番、4番しか聞いたことがないのだが、対照的な性格であるものの両方ともいい曲だと思う。3番は交響曲のような堂々とした曲を狙っていて失敗していないし、第3楽章など素敵なメロディーが聞かれる。ヨアヒムトリオの演奏(ナクソス盤)。そして4番”ドムキー”は親しみやすいメロディーで溢れていて、ドヴォルザークを満喫できる。ボザールトリオの演奏。三重奏曲では「テルゾット」もいい曲だと思う。リンゼイ四重奏団の演奏。
14曲ある「弦楽四重奏曲」も残念ながら後期の曲しか聴いたことがないが、いずれも素敵なメロディーが随所に出てくる。まず第10番が素晴らしい。全楽章ふんだんにドヴォルザークの音楽が詰まっている。これはナクソス盤でヴラハ四重奏団プラハという楽団が演奏しているのだが、アルバン・ベルク四重奏団に劣らず美しい音である。有名な12番”アメリカ”は第1楽章が気楽すぎていまひとつの感がするものの、第2楽章の哀愁に満ちたメロディーはとても素敵だし、第3楽章、第4楽章もいいと思う。スメタナ四重奏団の演奏。それに比べると13番は親しみやすさは少し減るが代わりに深みがでてくる。特に第2樂章が素晴らしい。ブラームスの項で述べた8枚ぐみにはいっているアルバン・ベルク四重奏団の演奏。そして14番も同様の性格の曲で、同じように第2樂章が素敵だがこちらは第3樂章もいい。ヴラハ四重奏団プラハの演奏。12の小曲の集まりである「サイプレス」もそれぞれの小曲がいずれも大変美しいメロディーをもつ。これもヴラハ四重奏団プラハの演奏。それから、ハーモニウムを使用する「バガテル」はボヘミアのメロディーとそれを奏でるハーモニウムの音色がなんともいえずいい。特に第1、第2、第3楽章に現れる主題は日本を思い出させて懐かしい気持ちになる。リンゼイ四重奏団の演奏。四重奏の小曲もいくつかあるが、これらも素晴らしい。聞くのは「ロマンス」「2曲のワルツ」(以上リンゼイ四重奏団)「ガヴォット」(ヴラハ四重奏団プラハ)である。
「ピアノ五重奏曲」も親しみやすいメロディーに満ちており、さすがドヴォルザークと思わせる。カーゾンとウイーンフィル四重奏団及びシュテパンとスメタナ四重奏団のCDを持っているがやはり作曲者と同じ国の楽団である後者の方が気合がはいっていていいと思う。それと「弦楽五重奏曲」は第3番しか聞いたことがないのだが、弦楽四重奏曲12番と同じく”アメリカ”という別名をもっており、これもボヘミアを感じさせるいい曲だと思う。リンゼイ四重奏団の演奏。

ボロディンの「弦楽四重奏曲第2番」はチャイコフスキーのそれにくらべて好きである。有名な第3楽章は当然だが、第1楽章のメインテーマも素敵だし、軽やかな第2楽章も好きである。エマーソン弦楽四重奏団の演奏。

グリーグの「ヴァイオリンソナタ3番」はリリシズムに溢れており好きだ。それになんといっても演奏がグリュミオー(ピアノはシェベック)だから素晴らしい。

フォーレの室内楽の多くはいまだその良さがわからない。その中で「ヴァイオリンソナタ」1番だけはとてもチャーミングな曲だと思う。しかし2番は、悪くないとは思うが今ひとつその良さがわからない。いずれもグリュミオーとクロスリーの演奏である。「ピアノ四重奏曲」1番及び2番は、共に第3楽章のアダージョはいいと思うがその他の楽章の良さがわからない。演奏はユボー、モンブラン、ルキアン、ナヴァラであるが、演奏自体も好みではない。「ピアノ五重奏曲」の1番及び2番も同じで、1番の第2楽章及び2番の第3楽章のアダージョはいいと思うし、その他の楽章でもところどころいいと思う部分はあるのだが、ぴんとこない。演奏もユボーとヴィアノヴァ四重奏団で同じタイプの演奏である。

ヤナーチェクの「バイオリン・ソナタ」は繰り返し聞こうとは思わないが、おもしろい曲である。クレーメルとアルゲリッチの演奏。2曲ある「弦楽四重奏曲」も同様の趣向であり、特に1番は面白く聞ける。ヤナーチェク四重奏団の演奏。

ショーソンの「バイオリン・ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲」は出だしがちょっと聞きつらいので損をしているが、以下の楽章はいいと思う。オリヴェイラとコーニヒの演奏。

天才ドビュッシーである。もう「ヴァイオリン・ソナタ」には何も言うことはない。天才のすべてが凝縮されているようだ。チョン・ルプーの演奏。ナッシュアンサンブルの演奏もいい。「フルート・ヴィオラ・ハープのためのソナタ」も同様でかつ美しい。エリス及びメロスアンサンブルエマーソン弦楽四重奏団の演奏。ナッシュアンサンブル、アンサンブル・ウイーン=ベルリンと持っているが、ナッシュアンサンブル、アンサンブル・ウイーン=ベルリンの演奏が両方とも甘美な音を振りまいて素敵だ。特に後者は音の流れがゆったりとしており、音に身をひたせる。「チェロ・ソナタ」はあまり有名ではないが、これも素敵だ。最初のピアノの出だしからして素晴らしい。ナッシュアンサンブルの演奏。ロストロポービチとブリテンの演奏もあり、これは力強いけれどもドビュッシーという感じとちょっとずれる。ドビュッシーはこれら3曲とあわせて計6曲のソナタを企画していたそうだが、志なかばで倒れてしまったとのこと。後の3曲も聞いてみたかった。1曲しかない「弦楽四重奏曲」はソナタほどの簡明さはないが、随所にドビュッシーのフレーズが聞かれる素敵な曲だ。特に第3楽章は美しい。アルバン・ベルク四重奏団の演奏。それから朗読の前後に音楽のつく「ビリティスの歌」は、音楽自体は細切れなのだが、それがまたドビュッシーにあっている。素敵だ。ナッシュアンサンブルの演奏もあるが、これはもうアンサンブル・ウイーン=ベルリンの演奏が、というより朗読しているのがカトリーヌ・ドヌーヴなのだから最高だ。

ルクーは「ヴァイオリンソナタ」一曲で有名で、グリュミオーとヴァルシの演奏で持っていたのだがいまひとつ楽しめなかった。ところが、偶然手に入れたオリヴェイラとコーニヒの演奏が、現代的な感覚で弾いていて大変素晴らしい曲であることを認識させてくれた。

ラヴェルは天才ではないと思うが十分素晴らしい曲を残してくれたと思う。しかしとっつきにくい曲も多い。例えば彼が先輩であるドビュッシーに捧げた「ヴァイオリンとチェロのためのソナタ」は第1章及び第3楽章はドビュッシーの路線上にあって美しいが、他の楽章は現代音楽に近く、ちょっと遠慮したい。ナッシュアンサンブル及びアンサンブル・ウイーン=ベルリンの演奏。一方「ヴァイオリンソナタ」は第2楽章にブルースがはいっているが、これは慣れると楽しめるようになった。カラシリとバルダの演奏。「ツィガーヌ」はおもしろい曲で聞ける。これもカラシリとバルダの演奏。なおこ曲にはオーケストラ版があり、チョン・デュトワ指揮ロイヤル響の演奏及びパールマン・メータ指揮ニューヨークフィルでCDを持っており、バイオリン独奏部分はそれらもよいが、全体としては室内樂版のほうが好みである。「ピアノ三重奏曲」は愉しい。ナッシュアンサンブル及びカラシリとバルダの演奏があるが後者の方が好み。また「弦楽四重奏曲」はドビュッシーのそれの延長線上にあり最初から楽しめる。ドビュッシーの「弦楽四重奏曲」とのカップリングでアルバン・ベルク四重奏団の演奏。そして「序奏とアレグロ」は夢見るような音楽である。一週間で、うちほとんど3晩は寝ずに書き上げたというのだから納得できる。メロスアンサンブルの演奏もあるがやはりアンサンブル・ウイーン=ベルリンの演奏の方が合っていると思う。

プロコフィエフの「ヴァイオリンソナタ」1番は、重々しくて暗い曲で好きなタイプの曲ではないのだが、素晴らしい曲であることに間違いはなく、その曲が献呈されたオイストラフとリヒテルの演奏がまた緊張感を伴った凄絶な演奏なのであげない訳にいかない。それに比べると、後に「ヴァイオリンソナタ」2番として編曲された「フルートソナタ」は明るくて親しみやすい曲である。そして第3楽章など素敵なメロディーが流れる。ゴールウエイとアルゲリッチの演奏とランパルとヴェイロン=ラクロワの演奏があるが、やはりアルゲリッチのピアノがはいっている前者の方がいい。「チェロ・ソナタ」はところどころ素敵なメロディーが出てくるもののあまりなじめない。

マルティヌーの室内楽は「フルートソナタ」しか知らないが、いい曲だと思う。

バルトークの「バイオリン・ソナタ」は1番しか聞いたことがないが、無腸に近く、楽しめる音楽ではない。クレーメルとアルゲリッチ、オイストラフとリヒテルの演奏。

大好きなプーランクの室内楽である。すべての曲(13曲)をナッシュアンサンブルの演奏で持っているが、前期の曲は面白い(例えば「ピアノ、オーボエとバスーンのための三重奏曲」)ものの、やはり後期の曲の方がメロディーが味わえるので好みだ。まず2分足らずの小品「ピッコロとピアノのためのヴィラネル」が素敵なメロディーである。そして「フルートソナタ」。これが大変素晴らしい。第1楽章は流れるようなセンス溢れるメロディー、第2楽章はロマンティックな心に染みるメロディー、第3楽章はとびはねるような愉しさに溢れたメロディーと、名曲とはこういうものだということを教えてくれる。この曲はランパルとヴェイロン=ラクロワの演奏も持っているがそれもいい。「クラリネットソナタ」も似たような構成で、やはり第2楽章のメロディーが胸に染みる。「オーボエソナタ」も同様に素晴らしい。この曲の場合には逆に第1楽章と第3楽章がメロディアスである。名ホルン奏者デニス・ブレインに捧げた小品「ホルンとピアノのためのエレジー」は力強さと優しさが同居した作品である。「ヴァイオリンソナタ」は、第1楽章と第3楽章はさまざまな種類楽想がごちゃまぜになって愉しいし、第2楽章は落ち着いたファンタジーを聞かせる。「チェロソナタ」も同じような傾向を持つが、特に最後の第4楽章が素晴らしい。「六重奏曲」は第1楽章はおもちゃをひっくりかえしたような愉しさで始まるが、だんだん落ち着いていって、堂々と終わる。

ショスタコーヴィチの「チェロ・ソナタ」は優しさにあふれた

ベルクの「弦楽四重奏曲」は美しい「音」だとは思うのだが、未だそれを「楽しむ」ことができない。短い曲の集合体である「抒情組曲」の方が理解しやすい感じがするのだが、残念ながらこれも「抒情」をちゃんと感じることができない。アルバン・ベルク四重奏団の演奏で例の8枚ぐみのCDの中にはいっている。「室内協奏曲」(バレンボイム及びズーカーマンとブーレーズ指揮アンサンブルインターコンテンポラインの演奏)と「フルートソナタ」(ペイとバレンボイムの演奏)もあるがやはり聞かない。

ヴェーベルンの「弦楽四重奏のための5楽章」「弦楽四重奏のための6つのバガテル」はもっと現代に推し進めたものだろうが、逆にこの曲の方がわかるような気がする。完全にふっきれている。「弦楽四重奏」もしかり。しかし楽しめない。ベルクの曲と共にアルバン・ベルク四重奏団の演奏。


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